2010年5月14日金曜日

読めないロゴについて考える〜六本木ヒルズ

よいデザインとは何か?
それは教科書的に言ってしまえば、「造形」「コンセプト」両方においてすぐれたものだと思います。

デザイナーにおいて「造形」のクオリティに関しては、ほぼ共通した認識を持っていますが、「コンセプト」については人によって違うことがあります。これは「よいデザインは何を目指すべきか」という答えが、デザイナーによって違うからです。わかりやすい例を挙げると、


「よいデザインが目指す目標とは」

・美術館などに永久保管される、高い文化的な価値
・売れる、大きな金銭的利益を生み出す
・イメージアップする
・信頼性・ブランド力を高める
・派手でインパクトがあって、目立つ、流行する

など様々です。


前置きが長くなりましたが、今回取り上げるロゴは「六本木ヒルズ」です。





このロゴが発表されたときは、いくつかのデザイン雑誌で取り上げられ、それなりに話題になった記憶があります。海外の有名デザイナーの作品だったはずです。
私はこのロゴを最初に見たとき「こんな読めないロゴタイプをよく採用したな」と思いました。
そして、学生時代に受けた外国人講師のある授業のことを思い出しました。その外国人講師は日本企業に勤めるデザイナーで、最初の授業のときに自分がこれまでに手がけた作品を見せてくれました。そのなかに、この六本木ヒルズのロゴタイプと似たようなコンセプトのものがあったのです。何が似ているかと言うと、英語のロゴタイプで、それぞれの文字に欠けているようなデザイン処理を施したものだったのです。その講師はこのロゴタイプをわたしたちに見せながら「このロゴは、日本人には読みにくいと言われ、採用されなかったものです。欧米人なら普通に読めるんだけど」と言いました。確かに一瞬では読めないものでした。言われれば読めるのですが。

私の考えではやはり「一瞬で読めないロゴ」はよいデザインコンセプトだとは思えません。
ですので、最初に述べた「よいデザイン」に対する考え方がこのロゴ制作の関係者とは違うのです。どちらが正しいと言うことはないと思います。

ちなみに、よく知られていることですが、六本木ヒルズのロゴタイプは、色々なバージョンがあります。これらのバージョンがセットになっていることもコンセプトのようで、この考え方は斬新でおもしろいと思いました。ここに「読めないロゴ」が採用された理由があるのかもしれません。










●六本木ヒルズ

造形:★★
★★
テーマ表現:★

汎用性:★★

※5点満点