2013年4月2日火曜日

ヤフオク! のロゴ


Yahooオークションが、「ヤフオク!」という名称に変更されたのを機に
ロゴが制作されたようです。





印象として感じたのは
「落ち着きのなさ」と「違和感」でしょうか。

完成度は高いとは言えないと思います。「ラインを揃えてロゴとしてのまとまりを出す」
「斜め上に向かう直線によって勢いを演出する」とういう考え方はよくわかります。しかし、「文字」としての完成度が低いために、「かっこわるい文字」に見えてしまいます。「ラインを揃えてまとまりを出す」といっても、単に直線上に揃えても、錯視により、揃っているようには見えません。
この場合「フ」の縦線が下に飛び出しているように見えませんか?
「ク」の字が少し下がっているように見えませんか?

通常だと、錯視の補正や筆順を意識させるための細かい調整を行います。目で見てそうとわからないレベルで、線の太さを変えたりする作業です。しかし、このロゴの場合はそのような調整は施されていません。すべての線が同一の太さで構成されている、図形的なロゴです。

全体として言えることは、一時的なキャンペーン用のロゴとしてなら問題ないかもしれませんが、長く使うためのロゴとしては完成度が足りていないと感じました。

個人的には下のキャッチコピーのフォントも良くないと思います。均質に見えるモダン系ゴシック体フォントなので、コピーが長いと瞬時に文章を読み取るのが難しくなるからです。

2012年6月13日水曜日

「570万円」のロゴ(ロンドン芸術大学)


—「570万円のロゴ」
最近ネット等で話題になった、「570万円」のロゴ(ロンドン芸術大学)。これについてはどのように考えればよいのでしょう?








ロゴデザインとして言えば、「歴史的名作」でないことは確かだと思います。しかしクオリティは高いです。文字同士の細かいスペーシングが、全体の緊張感を生んでいます。では、570万円という金額はどうでしょう? これについては何とも言えない部分があります。通常、大きなクライアントの案件であれば、ロゴ制作のための打ち合わせ・プレゼンだけでもかなりの回数を重ねるでしょうし、提出されたロゴが使用された場合のイメージ画像(名刺やレターヘッド、看板、社用車、段ボール箱など)を制作して、無数の検証を重ねるでしょう。そしてロゴが決定したら、数十ページにも及ぶ、用途別の「ロゴ使用マニュアル」を制作するでしょう。そうなれば、プロジェクトのスタートから決定まで、かなりの年月を要することになり、そこに570万円を支払ったとしても「高い」とは言えないのではないでしょうか。このロゴの場合、どこまでの範囲で570万円支払ったのかがよくわからないため、何とも言えないのです。ただ、大きな企業や公共事業であれば「570万円」という金額はそんなに驚くような金額ではないと考えます。もっと大きな金額のものもたくさんあるでしょう。
単に安く済ませるだけなら公募によるコンペ形式がよいでしょう。賞金100万円も出せば、かなりの応募が集まるでしょうから。しかし、そのようにして採用されたロゴが「名作」になりえるかどうかは、そのロゴの運用方法にかかっている部分も大きいのです。やはりその場合も厳格なロゴ使用の規定を策定する必要があり、そこにはそれなりのコストがかかるのです。

渋谷ヒカリエのロゴ


—渋谷ヒカリエ
東京スカイツリーとともに新たな東京の観光スポットとして、話題の「渋谷ヒカリエ」。







肝心のロゴはどうかというと、「ふつう」と個人的には感じています。ぱっと見た感じでは、文字の下部がカットされていて、「ちょっとおもしろいな」という印象はありますが、全体としては特に個性もなく、すごい完成度でもなく、「可もなく不可もなく」と思ってしまいました。「渋谷の新スポット」として騒がれている割には、ロゴは「新しさ」や「挑戦」が感じられません。これだったら、以前とりあげた「六本木ヒルズ」やその後にできた「表参道ヒルズ」のロゴの方が「新しさ」や「挑戦」が感じられます。








「ヒカリエ」を「新たな観光スポット」ではなく「百貨店」として考えると、このようなデザインになったことに理解がしやすいかもしれません。実際、運営業者は東急グループです。
「百貨店」はユーザーとして幅広い年齢層をカバーしなくてはなりません。そのなかでも「高齢者」は特に重要視されるでしょう。その場合「六本木ヒルズ」のような「読みにくい」文字は適切ではありません。そのためどうしてもデザインは保守的に成らざるを得ません。しかし、この「保守的」というのが非常にやっかいで、奇をてらったりできない分、本当の「文字の上手さ」が要求されます。完成度の高い文字を作ることは本当に大変です。しかし、「ヒカリエ」にはそこまでのクオリティはないように思います。個人的に感じたのは「Hik」の部分と「arie」部分で統一感がひまひとつだということです。最初の3文字は「直線的」で後の3文字は「丸っこい」ので、違和感を感じてしまうのです。

2012年1月18日水曜日

auロゴのリニューアル

既に色々なところで話題になっているようですが、auがロゴをリニューアルしました。ネット上の評判を見る限り、どちらかというと否定的な意見が多い印象を受けます。みなさんはどのように感じたでしょうか。ここでは、ロゴ自体の完成度とテーマ設定、ロゴリニューアルがもたらすであろう、ブランドイメージへの影響についての見解を述べます。




以前のロゴ




新しいロゴ



1.ロゴの造形について
クオリティは低くはないと思いますが、それほど高くもない印象です。筆記体風ではありますが、共通のエレメントの繰り返しで構成されており、以前のロゴよりも単純な造形と言えます。(図1参照)





黄色い部分の縦線・曲線と青い部分の曲線がそれぞれ共通のエレメント



以前の旧ロゴも今回の新ロゴも、既存のフォントでななく、オリジナル、もしくは既存のフォントを改造したもののようです。 旧ロゴは一般的なサンセリフ体(日本語でいうゴシック体)に近く、 新ロゴは書体というより「ロゴ」として絵的/記号的に作られた印象で、シンプルになっています。
個人的には、 旧ロゴの方が品質は高かったと思います。新ロゴはシンプルであるがゆえに、造形上の説得力を出すのが非常に難しいため、並大抵のことでは「すごいロゴ」にはなりません。旧ロゴは既存のサンセリフ体を改造して作ったように見え、文字としての完成度は新ロゴより高いと思います。また、新ロゴは小さく使うと個性に乏しく、ちょっとダサく見えます。


―2.リニューアルの狙いとリスク
一般的に「携帯電話会社ってロゴをコロコロ変えすぎ」という感想を抱く人が多いのではないでしょうか。私もそう思います。では、なぜこんなに頻繁に変えるのでしょうか。auのウェブサイトを見ると、とても単純な理由が読み取れます。それは新商品の発表会における話題作りです。この発表会における「auは変わります」というメッセージの象徴として、リニューアルしたロゴというのは非常にわかりやすいアイコンとなるのです。
ですので、ロゴ自体の品質はともかく、「新しくなった/変わった」という印象を世間に与えることにある程度成功していると思います。
しかし、日本の携帯電話会社は誕生から今までずっとこの調子でロゴを変え続けています。本当にこれでよいのでしょうか。世間はそこまで新奇なものを求めているのでしょうか。私としては、携帯電話のようなインフラに関わる会社には、それよりも「揺らぎのない品質」や「確固たる信頼感」の方が求められているように思います。ロゴをコロコロと変えてしまうと、ブランドとしての信頼感は薄れます。例えば、電力会社やガス会社がロゴをコロコロ変えていたら、どうでしょうか。少し怖い気がしませんか。大手銀行は、統廃合を繰り返すことでロゴが変わり続けましたが、ロゴのせいだけでないにしろ、信頼感は下がっているように感じます。ルイ・ヴィトンやシャネルが10年でロゴを3回変えたら、それでも欲しくなるでしょうか。このように、ロゴを変えるということには、それなりのリスクがあるのです。それでも変え続けるのには、そうせざるを得ない理由があるのでしょう。他社との競争のなかで少しでも目立たなくてはいけない、という強迫観念がその理由の一つだと思います。

私は、ドコモのロゴのリニューアルは失敗だったと確信しています。ロゴの品質が下がったばかりではなく、以前のロゴが打ち出していた「信頼感」を損ねるデザインだったからです。ドコモは、ロゴデザインの変更をしたことで、失ったものが大きかったと言えます。それに比べれば、auのロゴリニューアルが失うものはそれほど多くないと思います。



●au(リニューアル)

造形:★★★☆
テーマ表現:★
汎用性:★★★

※5点満点


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携帯電話会社のロゴを比べてみる(2010/3/31)