2012年1月18日水曜日

auロゴのリニューアル

既に色々なところで話題になっているようですが、auがロゴをリニューアルしました。ネット上の評判を見る限り、どちらかというと否定的な意見が多い印象を受けます。みなさんはどのように感じたでしょうか。ここでは、ロゴ自体の完成度とテーマ設定、ロゴリニューアルがもたらすであろう、ブランドイメージへの影響についての見解を述べます。




以前のロゴ




新しいロゴ



1.ロゴの造形について
クオリティは低くはないと思いますが、それほど高くもない印象です。筆記体風ではありますが、共通のエレメントの繰り返しで構成されており、以前のロゴよりも単純な造形と言えます。(図1参照)





黄色い部分の縦線・曲線と青い部分の曲線がそれぞれ共通のエレメント



以前の旧ロゴも今回の新ロゴも、既存のフォントでななく、オリジナル、もしくは既存のフォントを改造したもののようです。 旧ロゴは一般的なサンセリフ体(日本語でいうゴシック体)に近く、 新ロゴは書体というより「ロゴ」として絵的/記号的に作られた印象で、シンプルになっています。
個人的には、 旧ロゴの方が品質は高かったと思います。新ロゴはシンプルであるがゆえに、造形上の説得力を出すのが非常に難しいため、並大抵のことでは「すごいロゴ」にはなりません。旧ロゴは既存のサンセリフ体を改造して作ったように見え、文字としての完成度は新ロゴより高いと思います。また、新ロゴは小さく使うと個性に乏しく、ちょっとダサく見えます。


―2.リニューアルの狙いとリスク
一般的に「携帯電話会社ってロゴをコロコロ変えすぎ」という感想を抱く人が多いのではないでしょうか。私もそう思います。では、なぜこんなに頻繁に変えるのでしょうか。auのウェブサイトを見ると、とても単純な理由が読み取れます。それは新商品の発表会における話題作りです。この発表会における「auは変わります」というメッセージの象徴として、リニューアルしたロゴというのは非常にわかりやすいアイコンとなるのです。
ですので、ロゴ自体の品質はともかく、「新しくなった/変わった」という印象を世間に与えることにある程度成功していると思います。
しかし、日本の携帯電話会社は誕生から今までずっとこの調子でロゴを変え続けています。本当にこれでよいのでしょうか。世間はそこまで新奇なものを求めているのでしょうか。私としては、携帯電話のようなインフラに関わる会社には、それよりも「揺らぎのない品質」や「確固たる信頼感」の方が求められているように思います。ロゴをコロコロと変えてしまうと、ブランドとしての信頼感は薄れます。例えば、電力会社やガス会社がロゴをコロコロ変えていたら、どうでしょうか。少し怖い気がしませんか。大手銀行は、統廃合を繰り返すことでロゴが変わり続けましたが、ロゴのせいだけでないにしろ、信頼感は下がっているように感じます。ルイ・ヴィトンやシャネルが10年でロゴを3回変えたら、それでも欲しくなるでしょうか。このように、ロゴを変えるということには、それなりのリスクがあるのです。それでも変え続けるのには、そうせざるを得ない理由があるのでしょう。他社との競争のなかで少しでも目立たなくてはいけない、という強迫観念がその理由の一つだと思います。

私は、ドコモのロゴのリニューアルは失敗だったと確信しています。ロゴの品質が下がったばかりではなく、以前のロゴが打ち出していた「信頼感」を損ねるデザインだったからです。ドコモは、ロゴデザインの変更をしたことで、失ったものが大きかったと言えます。それに比べれば、auのロゴリニューアルが失うものはそれほど多くないと思います。



●au(リニューアル)

造形:★★★☆
テーマ表現:★
汎用性:★★★

※5点満点


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