少し古い話題ですが、今回は「GAP」ロゴリニューアル騒動について
考えてみたいと思います。
たいていの場合、大企業のロゴリニューアルに関する賛否両論は「慣れ」の問題が
大きく、ロゴそのもののクオリティの低下ではないケースが多い印象を受けます。
いかに先入観を取っ払って、見ることができるか。
それができなければデザインの品質を正当に評価することは不可能です。
ただし、デザインにおいて「時代の空気感」は重要な要素なので、
純粋なデザイン品質を理解したうえで、「今の人々にどのように映るか」を
適切に判断することが必要なのです。
さて、それらを踏まえたうえで「GAP」のロゴを見てみましょう。
右が今回ブーイングによってボツになった、新ロゴです。
一見してわかる違いとして、「新しいロゴの方が書体に個性がない」と思われることが
挙げられると思います。新ロゴの書体は、世界で一番使用されている書体、
ヘルベチカです。
現行ロゴの方は、既存のフォントの可能性もありますが、オリジナルの書体かもしれず、
他で見ることがあまりない書体です。
ヘルベチカは有名企業のロゴでもかなり頻繁に使用されていますし、
その汎用性と美しさにより、デザイナーから最も評価の高い書体のひとつです。
ですので、新ロゴの問題は書体の品質の問題ではなく、書体の扱い方の問題と
言えるでしょう。
はっきり言ってしまえば、「GAP」ロゴの問題は、プロがいちいち指摘することもなく、
単に「安直」で「誰にでも作れそう」なものだったので、ここまでのブーイングを
浴びたということです。
新ロゴは「汎用性」という点では優れていますが、「個性」「デザイン品質」が
あるとは思えません。ダメなデザインとまでは言いませんが・・・。
ヘルベチカはMacに搭載されていますから、学生でも作れてしまいそうです。
今回に関しては、新ロゴをボツにして正解だったと言わざるを得ません・・・。
かといって、現行ロゴが「名作」かと言われれば、そうではないと思いますが・・・。
●GAP(現行)
造形:★★★
造形:★★★
テーマ表現:★★★★
汎用性:★★★
※5点満点
※5点満点